八幡和郎の時事(時事ニュース)解説
平成18年09月06日

秋篠宮妃ご出産と皇室典範改正・雅子妃の今後など

秋篠宮妃が男子を出産された。この慶事をまずはお喜び申し上げたい。皇室典範改正問題が議論される中で、このご誕生があったことは、「天命」のようなものを感じさせるというのは悪のりかも知れないが、なんとかしなければといういろんな方の思いの結果であるのは確かであろう。

少なくとも、この「運命の子」が誕生とともに持った正統にして正当な皇位継承権を誰かのために奪い取ろうという策謀が行われないことを望む。

愛育病院
午前8時27分、体重2558g、48.8cm
皇室では41年ぶりのご親王が誕生された
(港区・愛育病院)

また、そういう議論が起きないように関係者は積極的な発言をすべきだ。とくに小和田恒氏にそれを強く望む。沈黙は騒乱へのゴーサインと揶揄されては不本意であろう。

ただし、お子様が男子であるか女子であるかは、皇室典範の改正にとって本質的な状況を変えるものではない。このたった一人の幼児に皇室制度の興廃のすべてをかけるわけにもいかないのだ。また、普通に考えれば現在の皇太子殿下からその次への継承が行われるのは半世紀ものちのことであり、最終的な筋書きを急いで決めねばならないものでもない。


いま必要なことは継承候補者がわずか数人しかいないといった状況を解消し、生物学的な運不運で皇統断絶などないようにすることだ。不幸な事態をいろいろ想定することを不敬なように感じる人も多いが、「控え」が多くないとテロで皇室制度をゆるがすことが可能になり、皇族のセキュリティ上も問題が多いのは当然だ。

皇位継承者の範囲を広げる方法はいろいろ変化球もあるが、基本的には旧宮家男子の復帰か、女帝・女系の容認しかない。

しかも、どちらについても反対する人はいるのだから、とりあえずはどちらの選択も可能なように条件整備をしたうえで、最終的な結論は将来の世代に任すことが現実的だ。

まず最初に旧皇族をどの範囲で、どのくらいの人数を、どんな方法で復帰させるかである。

まず必要なことは、皇位継承候補たる「旧皇族」の範囲を明確化することである。これについては、竹田恒泰氏が「皇系族」という概念を提案されている。いわば皇族予備軍である。いってみれば戸籍の整備である。

その範囲はいわゆる11宮家より広い範囲とすべきで、「明治維新以降皇族を離れられた男女とその直系子孫」を「新・皇統譜」に記載することを規定すべきだ。あまり知られていないが、宮家の二男以下で戦前に侯爵家や伯爵家を創られ皇族を離れられている方がおられる。

たとえば京都の青蓮院の前門跡は久邇宮家の生まれ、つまり香淳皇太后の弟だが、東伏見伯爵となられている。だからこれまでいわれる旧皇族の範囲には入らないのである。鹿島、筑波などといった各家も同じだが、これらも排除すべきでない。

だが皇族の人数を適切に保つ必要もある。そこで新たに皇族とするのは、戦後存在し断絶した、あるいは断絶が予想される宮家の養子とするときに限定してはどうか。

その場合に東久邇、竹田、朝香のように明治天皇の女系子孫かどうかで区別すべきだ。皇室の歴史では昔から男系が基本だが、女系も補強材料として考慮した合わせ技はよく採用されてきたのであり、明治天皇の子孫かどうかは国民意識の上でかなり意味があるはずだからだ。

そこで「明治以降に臣籍降下した皇族の男系子孫(以下旧皇族と呼ぶ)にして明治天皇の女系子孫ならば、宮家の養子となることができる」とする。たとえば東久邇家などの男子が常陸宮や廃絶した秩父宮などを継げることを意味する。

また、「旧皇族の男子は宮家の婿養子となれる」とすればよい。これは三笠宮家などの婿養子となりうる範囲を明確化することになる。とくに後者の候補を広くとった方がよいのは近親結婚による弊害を避けるという理由もある。

赤坂御所
赤坂御所では厳戒な警備の中、
頻繁に車が出入りし、慌しさが伺える
(公式発表後の赤坂御所)

こうした養子縁組の許可は皇室会議が行えばよい。

次に女系皇族についてである。私はまず皇族の女性について結婚しても一代限りは皇族ないしそれに準じる身分を本人に限り保持することを認めるべきと思う。第一はせっかく子供の時から皇族としての教育を受けてきた彼女たちを、民間人と結婚したからといって公務を分担してもらわないのはもったいないことだ。ヨーロッパ各国で結婚した王女にも公務をさせているのだから日本でもやればよい。第二に女系天皇には前例がないが、女帝についてはこれまで皇族の未亡人か独身に限られてきたという結婚に伴う問題はあるものの、多くの人が容認範囲だと認めている。


具体的には皇位継承についてはもし「従前の規定によっては継承すべき者がいないときは、皇族(養子又は女性皇族を意味する)の中から皇室会議が指名する。ただしその場合には以降の継承については改めて皇室会議が指名する」として緊急事態に備え、かつ、その緊急措置がその後の継承原則を束縛しないことが適当だ。

そもそも、とりあえずは男性皇族が七人もおられる。だから、緊急事態はよほど異常な状況が起きたときだけなのである。

そんなときはその異常な状況が生じた時点での年齢なども考慮した方がよく、柔軟な規定の方がよい。女系子孫の天皇を認めるかどうかなどは、それから議論して方向性をみいだせばよいことではないか。

大原則はこんなところだが、皇室典範を改正するなら次のようなことも併せ考えるべきだ。

  1. 皇室会議の権能を強化するため、現在はメンバーでない陛下ご自身も構成員とすべきだ。
    場合によっては御聖断が必要な場面があった場合でも、現在では出席されていないのだからどうしようもない。
  2. 第二は、皇族の結婚は認めるか認めないかの二者択一でなく、ヨーロッパ諸国のように、結婚は認めるが皇位継承権は放棄させるとか、皇族を離れることを要求するといった規定が必要だ。そうしないと婚姻の自由とのかねあいがとれないだろう。
  3. 第三は、長寿化とか摂政という制度が時代的な雰囲気にそぐわないのではないか。そこで退位、即位辞退などの可能性を確保するべきだ。
  4. 戦前の皇室典範にあった 「即位ノ礼及大嘗祭ハ京都ニ於テ之ヲ行フ」 という規定を復活すべきだ。京都で即位儀礼を行うことを再び規定することだ。この規定は明治天皇の強い希望で入ったものだ。皇室の原点は高松宮殿下なども強調されていたとおり、ほとんど防御設備もない京都御所にあったころのものである。その原点をたいせつにすることで、皇室制度は永続性を持ちうるだろう。

これとともに、このご出産が雅子妃のご病気にどのような影響を与えるかという質問があちこちのマスコミから来ているので、以下のようにお答えしている。

雅子妃の御不調の原因はお世継ぎ問題ではない。このコラムでもたびたび書いているように、「典型的な帰国子女が伝統的な行事や仕事上のお付き合いがいろいろある旧家などに嫁いだことによる無理」である。皇室や宮内庁が意地悪なのでも、本人がわがままなのでない。そもそも難しい組み合わせだったのである。家元、お寺、老舗、企業オーナーなどと結婚されても同じような困難に直面されたであろう。

しいていえば、未来の天皇の母としての重圧から解放されることになったわけだが、皇太子妃としての、あるいは、未来の皇后としての圧迫がなくなるわけでない。

解決方法はいろいろあるが、私は妃殿下とか皇后陛下という制度にそもそも無理があると思っている。首相夫人は公職でないので、ファーストレディーとしての仕事を無理のない範囲で、それぞれの能力と事情に応じてできる。皇族夫人も、皇太子夫人とか天皇夫人でよいのであって、本人が公職である妃殿下などにならなくてよいのだ。

逆に、生まれながらのプリンセスには、御本人が承諾すれば結婚しても公務を続けて欲しい。

妃殿下制度というのは皇族が皇族とか五摂家の女性としか結婚しなかった時代の制度だ。


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八幡和郎に関する紹介文
八幡和郎
やわたかずお
評論家
コーポレートガバナンス協会理事
1951年滋賀県大津市生まれ
1975年東京大学法学部卒業後、通商産業省に入省。
1980年には、当時から行政の最進国であったフランスの国立行政学院(ENA)に留学し、ジュルス県庁、工業省、フランス電力、クレディ・リヨネ銀行にて行政を研究。
以後も留学で得た知識を実際の国内行政に活かし、通商産業省大臣官房情報管理課長をはじめ、数々の役職・任務を果たす。1997年に通商産業省を退官後、実際の行政の実情と経験から問題点を指摘できる数少ない論客員として、テレビの対談番組への出演や本の出版など、幅広く活動。
現在、コーポレートガバナンス協会理事のほか、徳島文理大学教授

[やわた48ドットコム]
http://www.yawata48.com/
[八幡へのメール]
yawata88@mx.biwa.ne.jp
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