56.日本のプライバシー保護には過剰な面も?

  米国の立ち直りと日本の低迷の最大の原因が
情報化への対応の差であることはよく言われるとおりです。
パソコン普及率もそれが電話線と繋がっている率も日本は低く、
行政情報化も遅れているのです。
この遅れを取り戻すことが日本経済再生のポイントのひとつであることは
いうを待ちませんが、今回は、パソコンの普及やリテラシーの向上だけでなく、
プライバシーまでも含めた価値観というか、文化そのものが変わらなくては
ならないという話をしたいと思います。

  情報化を進めることについては誰も異議がないのですが、
そうしたとき必ず「プライバシーの保護に万全を期するように」という条件が付けられます。
ところがこれがくせものなのです。
というのは、何がプライバシーかということが国によってずいぶんと違う、
というよりは日本ではたいへん広く考えられているということなのです。
しかし、プライバシーの範囲が広い社会というのは、
情報化を進める上でかなり制約が出るだろうということなのです。
ここでは、病気、家族関係、学校の成績や勤務成績といった三つの点に絞って
考えてみたいと考えます。

  いま医療費について本人にレセプトを公開すべきだという議論があります。
どんな治療を受けてるか知ることは当然の権利のように思えますが、
日本では「ガン告知」も本人にはしないという習慣がありますから、
ここのところをそのままにしようとすれば、医療記録の公開は本人についてすら難しい。
ところが外国では、誰かがガンであることは本人はもちろん、
まわりの多くの人が当然のことのように知り、本人を励ましている。
これがエイズであっても、神経科系の病気の場合でもそうで、
鬱病の治療にときどき通院しているなどというとインテリの証とすらいわれています。

  欧米人の家庭に招待されていったら、三人の子供の顔が全く違う。
不信に思っていたら主人が、「この子は私の前の結婚の時の子供で、
あちらは家内の連れ子。三人目の赤ん坊だけは私たちの子供です」などと、
とくに隠し立てをするでなくいうのを聞かされた経験もあります。
ところが、日本では親子関係など家族関係は他人に知られたくない
プライバシーだとされています。
しかし、そんな法律的に形を取ったことは本当に隠すような性格のもので
ないのではないのでないかと思うのです。
  学校の成績や職場での勤務評定も日本では公開していないのみならず、
本人に渡す通知票すらあいまいな言葉で誤魔化して、
成績という形にしたがらないくらいですが、
外国では正々堂々と公開していることが多いのです。

  ともかく、プライバシーとして他人に知られたくないことが多くあって、
情報化に当たっても過度に配慮しなくてはならない国では、
情報化はうまく行かないでしょう。
情報化が進むと、情報の流通が活発になり、
これまで公開していなかったようなことが表に出ざるを得ない。
だから、情報化社会では公的な部門でも企業でも情報公開は不可避です。
このことは、プライバシーに関することでもそうであって、秘密は大変保ちにくくなるし、
むしろ、つまらないことを過度に隠さない文化を創っていくべきだと思っています。
そうでないと日本経済の競争力にもかかわってくると思う。

  これは企業についても同じで、会社の情報についても、
あるいは給与とか勤務評定についても、
オープンになってもみんながそれを素直に受け入れる企業風土を獲得したところは
これから強いと思います。
たとえば、今度のボーナスを誰がいくらもらったかをオープンにしても
不満が残らないといった企業はこれから間違いなく成長するでしょう。

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