83.首相訪米と経済再建〜その2

  先週の土曜日に「パックインジャーナル」に出演したとき、
日本経済がいま再建に成功して高めの成長率に戻れなければ、
私たちの孫の時代には、「お祖父ちゃんの若いころは、日本は世界でも一番金持ちで、
若い学生やOLでもハワイに遊びに行けるほどだったんだよねぇ」ということになるだろうと
いったら結構受けた。

  もし、日本経済がこのまま沈んだらどうなるのかはもっと考えてよいことだ。
日本経済にとって中くらいのシナリオは、このへんで、なんとか、3%くらいの成長に戻って、
少し福祉などの無駄を省くとか、諸費税も10%くらいまで上げるとかしながらも、
革命的な変化などしなくてもよいまま財政再建もしていくといったことである。

  それでも、かなりたいへんなことだが、まぁ、政府が考えて国民も暗黙の上では
仕方ないと思っているのがそんなところである。

  しかし、このシナリオは、米国のバブルがはじける前に、
日本経済の復調があったという前提であった。
残念ながら、このシナリオすらいまは難しい。
したがって、日本人は米国に頼らずに経済の復調を成し遂げるという
さらに厳しい試練の前にいる。

  それなら、経済が復調しないとどうなるかだが、個人の貯蓄があり、対外債権国でもある日本は、一気に地獄の底へ真っ逆様ということにはならないだろう。
アルゼンチンは第二次世界大戦が終わった段階で世界で五本の指に入る大国だった。
それが政治の混乱と経済政策の誤りで50年間も坂道を転げて中進国になり、
フォークランド紛争で負けてやっと目覚めて再建途上にある。
日本が駄目になるとすればこのシナリオだろう。

  デフレのあとには物価は上がり、資本は逃避し、人材は流出する。
社会資本はメンテナンスもできずに荒れるに任され、
高度医療や延命医療は保健の対象外となり、数少ない設備のよい病院は長蛇の列となる。
あるいは、公立病院の設備は老朽化し、金持ちは自由診療の市立病院へ行くか、
海外に病気治療に渡る。
当然に平均寿命は落ちる。
学校も公立学校は崩壊し、お金があれば海外留学かそれができないなら
小学校から私立に行く。

  人気のある就職先は、まず、海外で働くこと、ついでは外資系となる。
公務員の賃金の遅配は当たり前となり、ストが頻発するし、
賄賂を出さないと公務員は働かなくなる。
治安も悪化し、ガードマンも広く雇われるようになる。
鉄道事故も頻発する。
シンガポールや台湾は日本の所得を大きく上回り、
日本人がこれらの国に3Kや風俗産業に出稼ぎにいくことも珍しくなくなる。
「じゃぱゆきさん」でなく「からゆきさん」が増えるだろう。

  環境は経済成長が落ちるとよくなりそうなものだが、粗悪なガソリン、老朽化した車、
環境対策への財政支出の削減で必ずしもよくならない。
ソ連東欧末期に環境が悪くなったことは周知の通りである。

  こういうシナリオが嫌なら、少なくとも、10年くらいは、
経済成長優先というコンセンサスが必要だ。
財政再建か景気刺激かという方法論はともかく、
目標として成長優先と言うことが大事なのである。
いつもいうことだが、長期的な目標と中期的な必要性を混同しないことが何より大事なのだ。

82.首相訪米と経済再建〜その1

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