169.アルゼンチンに日本の行く末を見る

  これから日本はどうなるかと質問を受けたとき、残念だが、いちばん、可能性が強いのは、
これから五〇年くらいはずるずると悪くなり続けるのではないか。
たとえば、アルゼンチンは終戦時には世界でGNPが五本の指に入っていた。
それが、半世紀もゆっくり落ちぶれていって、
いまでは中進国だが、これがいちばん考えられるシナリオだ」と申し上げている。

  日本は外貨準備も世界一だし、国民の資産もたっぷりあるから、
短期間に一気に経済が破綻するということにはならないであろう。
むしろ、ゆっくりと、零落していく可能性が強い。

  いまはデフレだが、いつになっても駄目な日本経済を見て、
やがて、円高に転じ、それが引き金になってインフレに転じていく。
財政は苦し紛れにそれを容認し、国民は社会福祉の切り下げに容易に同意しない。
抜本的な経済再建策は採られないまま、政治不信が高まり民主主義は形骸化する。
気の利いた国民は海外に資産を逃避させ、事実上のドル経済になる。
有為な人材は海外に活躍の場を求めて流出するといったことになる。

  アルゼンチンが豊かな国だったといっても、若い人たちにはぴんとこないだろうが、
「エヴィータ」で知られるペロン大統領の時代など実に華やかだった。
「母を訪ねて三千里」というアニメで知られるお話は、第一次世界大戦ののちに、
貧乏なイタリアからアルゼンチンに出稼ぎに行く話だった。
コロン劇場はスカラ座、メトロポリタンと並ぶ三大歌劇場といわれ、
エーリッヒ・クライバーなどが活躍した(だからカルロスはアルゼンチン生まれである)。
白井、矢尾板を破ったパスカル・ペレスは、
豊かな国からやってきたボクサーだというイメージだったと年輩の人はいう。
ブエノスアイレスは南米のパリといわれた。

  アルゼンチンは、半世紀駄目だったあと、
やっと、フォークランド紛争で負けて少し目覚めた。
最近、また、うまくいかなくて、トルコ、日本と並ぶ世界恐慌の三大懸念などといわれているが、
それでも、一時よりはだいぶましである。

  日本は、このように、ゆっくりと、世界の中の上くらいの国に、
別の言い方をすれば、一九六〇年代の国際的な地位あたりまで徐々に落ちていき、
そのあたりで、目覚めるのではないかというのが私の予想である。

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