170.国立慰霊施設についての私の提案

  靖国問題については、すでに三回も論じたが、
小泉首相の参拝決行を踏まえて、もう一言書いておく。
これまでも書いたように、私は公式参拝反対だが、
総裁選挙以来の経緯を踏まえれば、前倒し決行はとりあえず正しい判断だろう。
公式だとか私的だとか余計なことをいわなかったのもとりあえず正しい。

  しかし、8月15日に戦争責任などについて
これまでより一歩踏み込んだ表現をしたのは稚拙である。
いまこのタイミングで、あのような譲歩をしても
その場しのぎといわれるだけで評価されない。
譲歩は評価されるときにやるものだ。

  それとの比較でも、A級戦犯合祀問題について何もいわなかったのは、
やはり、小泉内閣がA級戦犯関係者を多く抱えることと関連するのだろうか。
A級戦犯を守るために国民全般を悪者にされるのはあまりよい取引でない。

    また、政党についてだが、民主党は、もし、政府の対応をあそこまで非難するのなら、
党内で参拝したものを処分するべきだ。
そうでないと、いくらなんでも、首尾一貫しないし、
信念もなしに外国政府に迎合している印象を与える。

  公明党の対応は、外国への配慮と信教の自由との係わりと、
もっと明確に区別して語るべきだ。
また、今後の扱いについて積極的に恒久解決案を提案することを期待したい。

  それから、ある新聞は、中国の唐外相の「やめなさい」発言を参拝決行の根拠としたが、
外国人が日本語をやや稚拙なかたちで使った揚げ足を取るのはよいことでない。

  さて、今後のことだが、A級戦犯問題の解決に全力を上げることと、
国立慰霊施設問題に真剣に取り組むべきだ。
慰霊施設は千鳥ヶ淵でよいのではないかという意見もあるが、
あれは海外戦没者の墓地で、必ずしも合目的でない。

  むしろ、現在ある施設を前提にせず、白紙で考えるべきである。
また、複数を念頭に置くべきである。私の私案は以下の通りである。

(1)あらゆる戦争にまつわる犠牲者の鎮魂と
平和への願いを目的とした国立の平和記念碑を広島に設け、
これを、もっとも主要な施設として位置づける。
なぜ、広島かといえば、国際的にもっともアピールが強いからである。

(2)太平洋戦争におけるすべての犠牲者の慰霊碑を、東京以外に設ける。
対象は、民間人も外国人も含む。
これと同時に戦没者追悼式典も、武道館から場所をここへ移す。
(靖国神社から物理的に離すためにも東京の外へ出た方がよい。
たとえば、富士山麓とか京都とか何らかの意味で日本のシンボルであることころがよい。
また、靖国神社にしても太平洋戦争の死者だけを祀っているにわけでもないのに、
そればかりが語られることは他の戦争の戦死者に失礼であり好ましくない)

(3)靖国神社の近くか、境内の一部を神社から分離した上で、
戦死した軍人のための宗教色のない慰霊碑を設ける。
慰霊の対象から、A級戦犯は除く。
また、戦後の自衛隊関係の殉職者なども除く。
(靖国神社は、戦後、宗教法人と国立施設に分離すべきであった。
それをいまからでも改めてするべきである。
靖国神社のステータスを変えるのでなく、
戦前の靖国神社を二つの機能に分けるという発想の方がよいのではないか。
また、祀る対象は、戊辰戦争という始まりもあるのだから、
終戦という終わりもあるべきで、自衛隊関係者などは
別に殉職慰霊施設を設けるべきである)

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