428.外務省の情報隠しという非難は正しいか

日朝首脳会談で拉致被害者の家族たちへの情報伝達が遅れたということが非難されている。外務省もここは低姿勢を貫いた方が得策とみてか頭を下げているようだが、私はもう少しいうべきことを言っておかないと今後へも悪影響が大きいと見る。
 誤りは、一刻も早く家族に結果を報せたいということで無理をしたことにある。福田官房長官の人の良さと功名心が裏目に出たのでないか。
 私は、今回の会談では、全員の安否確認と生存者の帰国保証を会談の入り口における絶対条件にするべきだと強く主張してきた。今回はそれが実現し金正日総書記の謝罪、生存者の一部との外務省関係者との面会まで得られた以上は、そのあとは、ほかの重要問題についての話を急ぐのが正しい。
 今回の会談では、一日で、それも食事も一緒にとらずにすませるという方式がとられた。翌日にまでわたる会談にすると双方にいろいろ邪魔が入って余計な条件が加えられる可能性があり、短時間の会談に時間を区切ったのはまことにトップ同士の話し合いとして実に賢明であった。そのなかでは、時間が限られた試験で第一問に使う時間と神経にはほどほどの限界を設け、ともかく、すべての問題の答を書くことが要求されるのと同じように最低限に必要な話が成立すれば細部に拘ることなく次の課題に進むのが正しい。
 もし、日本側が本人確認だ、詳しい状況の説明をしろ、真相解明をして関係者をどのように処罰するかはっきりしろなどと言い出したら時間はたちまち経過していったに相違ないし、国交回復交渉などほかの問題が話し合われないと拉致問題についての合意も棚上げになっただろう。
 結果を早く家族に伝えたいという気持ちも分かるが、外交交渉、とくに首脳会談に実況中継に近いことなど必要ないというより有害である。本国に経過を伝えるということなどに過度に神経を使っていては首脳自身にとってもスタッフにとっても神経がそちらにとられ交渉そのものがおろそかになる。そして、結果は予断なしに首脳が自ら国民に説明し、そののちに補足説明を官房長官やスポークスマンがすればよいのだ。家族の方々には、総理記者会見の直前に情報を整理した上でお知らせすれば十分だった。一刻も早く報せて上げたい気持は分かるが、国際平和や国の利益にかかわる交渉に悪影響があってもでは困る。福田官房長官の父の福田首相はダッカ事件のときに「人命は地球より重い」といって赤軍派の釈放を行って世界から嘲笑されたが、今度は生命でなく、「一刻も早く官房長官から」というワイドショー的な感覚の功名心が外交的成功に優先した。
 拉致議連のある議員は、「金正日体制の延命に力を貸すな」といっている。しかし、非友好的な関係にある外国政府と交渉するときに、政権交代がない限りは交渉の相手とせずという態度が成功する確立はたいへん低いことを知るべきだ。米国が中南米相手の小国に対するなら無理も通るが、中国の開放もロシアのペレストロイカも共産党政権が打倒されて実現したのでない。とりあえずは体制内改革だった。米国がイラクのフセインを、イスラエルがアラファトに失脚を迫っているが、彼らはそのためには戦争が必要であることを知っているしその覚悟もある。ユーゴのミロシェビッチ追放も戦争なしには無理だった。日本もかつて「蒋介石相手にせず」といったのが何よりの失敗だった。
 北朝鮮相手にも、現体制と交渉するのを韓国だって望んでいる。金正日を追放して混乱状態に北朝鮮を陥れることを恐れている。それに、今後、日朝関係が挫折したままで南北の雪解けが進みでもすれば、「反日」を統一のエネルギーにした国家が誕生でもしかねないことを恐れるのも、私が北朝鮮との和解が不可欠と考える理由のひとつだ。勇ましいことをいう人は、北朝鮮と戦争でもやるつもりなのか。そうなったら韓国は北朝鮮と組んで日本と戦いかねない。それが民族というものだ。

427.小泉改革の地方潰しのメカニズム

MENU

429.ジャイアンツ優勝に関する予言大的中

© 2001 Kazuo Yawata . All Rights Reserved.