1.国民に解り易い二大政党の出現を
 総選挙の結果をどう評価するか、マスコミにも戸惑いがあるようだ。
「与党後退 安定多数は確保」などという見出しもあったが、無敵の大連合艦隊が
大幅に議席を減らしながらも、政局安定に必要な議席はしっかり確保するという目標は、
したたかに達成したということだろう。

 いまの自公保体制で自民党が狙うのは、衆議院より参議院での安定であることを
理解しないと現在の政局は読めない。
現行の憲法における特色の一つは強い参議院である。
アメリカを別にすれば、上院というものは下院の暴走を抑える緩和剤程度の
力しかないところが多い。
ところが、日本の場合は、首相指名権と予算の採択以外については、
ほとんど対等の権限を保持している。

 何か新しいことをやろうと思えば、参議院で多数を占めることなくしては不可能なのである。
自公保は、衆議院では巨大であるが、参議院ではなんとか過半数を確保できるくらいの
勢力でしかない。しかも、参議院議員の任期は六年で、解散もないから、
政権構想にあっては衆議院より参議院のほうが大事なくらいなのである。

 自民党の野中幹事長らは衆議院では安定多数を確保すれば十分で、
むしろ、来年の参議院選挙での公明党の協力を得ることこそ肝要だと考えて
現在の体制を組んでいる。

 来年の参議院では大都市部の地方区では複数の議員が選ばれるので、
自民党と公明党が協力することに、互いにあまりデメリットはない。
そんな意味では、来年の参議院選挙を終わるまでは、自公保政権の枠組みは
合理性を持っている。しかし、それ以降ということになると、次の総選挙を考えれば、
自公どちらにとっても、自公保という組み合わせが得かどうか再考することになることだって
ないわけではなかろう。

 それでは、今度の選挙結果は、民主党にとって勝利だったのだろうか。
たしかに、二大政党のひとつとして認知を受けたということはいえるだろう。
しかし、これが近い将来に政権を担えるかどうかというと、あまりにも、大都市住民、
それも大企業や公的機関で働く比較的高い所得の中堅層の利益に沿った路線に
偏った感を否めない。

 その結果、東京やその周辺では大勝利したが、地方ではまったく伸びなかった。
説明不十分な「公共事業罪悪論」、「財政再建論」を掲げた結果、鳩山由紀夫代表自身が
危うく北海道の地元で落選するところだったことに象徴されるように、
自民党を上回る勢力になるには地方でも受け入れられる政策を考えて行かなくては
ならないのではないか。

 二大政党以外では、社民党と自由党の勝利、共産党と公明党の敗北ということになる。

 自由党は政策論争をきちんといどんだことが好感を持たれたのだろうが、
自由党が民主党などと組むことは筋が通らない。選挙での戦術的な協力はともかくとして、
「自民党より右」の政党としての位置づけを明確にすべきだ。

 共産党の敗北は、いわゆる柔軟路線の限界である。
共産党の伝統的な政策を放棄はせずに、とりあえずは実行を求めないだけというのでは
分かりにくい。冷戦構造のなかでも、ソ連などから独立性を守ってきたといっても、
路線変更はまったく必要ないというのは説得力がない。
共産党の主張が冷戦下で 自由世界の一因としてふさわしいものだったとまでは
いえなかったはずである以上、もう少し踏み込んだ路線変更が必要でないだろうか。

 それに対して、連合の支持が期待できず、組織的にはほとんど壊滅状態の社民党が、
女性の党、あるいは市民派的政党として再起のきっかけをつかんだのは、
将来の政界再編成などもにらんで意義が深い。
さきほどの民主党の路線に対する疑問とも関係するが、国民にとって選択の対象となる
二大政治勢力のうちひとつは、かつての社会党ほど極端でないにしても、
明確に進歩的な色彩を持つのでないと国民は戸惑うことになる。

 小選挙区制度のメリットは、政権交代可能な二つの政治勢力が分かりやすく
成立することである。
二大政党は、国民にバランスのとれた形で、選択肢を与えるものでなくてはならない。
ところが、小沢一郎の自民党離党と細川政権成立からというもの、
党利党略で合従連衡が繰り返されるばかりである。

 私は昨年の自自公政権成立のときに、「どのような二つの政治勢力を成立させたら、
健全な二大政党となるかを、ワンセットで考えるのが必要でないか」ということを書いたが、
ここで、それを再提案したい。
ともかく、細川内閣が自民党右派が分離した新生党と社会党をはじめとする左派勢力とが
結ぶというねじれ現象で成立してから、主義主張でなく権力欲で政党が離合集散する
おかしなことになった。

 今回の選挙では、自自公があらゆる既得権益を擁護し、民主党は大都市住民、
それも大企業や公的機関で働く比較的高い所得の中堅層の利益に沿った主張を
したのであって、あまり建設的な対立構図でなかった。
その結果、民主党は東京やその周辺では大勝利したが、地方ではまったく伸びず、
鳩山代表自身が危うく北海道の地元で落選するところだった。
憲法改正問題などでの、鳩山代表の唐突な前向き姿勢も、有権者を戸惑わせた。

 やはり、かつての自社両党ほど極端でも困るが、英国の保守党と労働党、
ドイツのキリスト教民主党と社民党のような保守、革新の二大政党というのが、自然だと思う。
国の基本的なあり方や外交防衛については、保守政党は、憲法改正、民族主義、
自主防衛力の充実、中央集権などを基調にすればよいし、
革新政党は、護憲、国際主義と外国人の権利拡大、国際的な安全保障、
地方分権を主張すべきだ。

 経済政策については、保守政党が小さな政府と規制緩和を、
革新政党が社会福祉国家と必要な政府による介入へ傾斜するのが自然だし、
税制でいえば、革新政党は資産に対する課税の強化や納税者番号制などによる
税金逃れの防止に積極的に取り組むことを主張すべきでないか。

 教育では保守政党が選択の自由の確保を重点とし、革新政党が公立学校の充実を
優先させることが適切だし、福祉では保守政党が自己責任を、革新政党が公的責任に
傾斜してよい。
このほか、保守政党は家庭、古い地域社会、伝統文化、プライバシー、大型開発などを、
革新政党が男女機会均等、市民参加、情報公開、NPO、地球環境などにより
大きな価値を見出すべきだろう。

 私の提案は、国際的にも常識的な保守革新の二大政党論だが、ほかの枠組みもあると思う。
むしろ、いろんな人が、こんな二大政党、あるいは二大政治勢力が成立すべきだとという
構図を提案すると良いと思う。
また、二大政党でなくとも、政党連合同士の二大勢力で選挙戦を戦うことも可能だし、
参議院では小政党が存立できるような選挙制度とすることも一考であろう。
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