5.畿央新都への提案
  国会等移転審議会が、「栃木・福島」、「岐阜・愛知」、「三重・畿央」の三地域を
首都機能移転候補地として選定したのは昨年の一二月であるが、
このほど、畿央地域を首都機能移転地として最初に提唱した民間研究グループ
「首都機能移転構想研究会」(端信行・国立民族学博物館教授)は、
「 21世紀における日本と畿央新都」と題する緊急提言をまとめた。

  「三重・畿央地域」への首都機能移転については、
1987年に私が「東京集中が日本を滅ぼす」(講談社)のなかで
三重県北部への首都機能移転を提案したのが最初で、その後、
この「首都機能移転構想研究会」の前身である「国都創造の会」が
畿央地域(伊賀地方を中心とした地域)への具体的提言をまとめた。
さらに、これを国会議員有志が取り上げ、私もそのとりまとめに協力したものである。
その後、関西に本拠を移したのちは、この研究会の特別副座長として参加している。

  さて、今回の提言は、石原新太郎都知事や扇千景国土庁長官の反対で論議が
活発になっている首都機能移転について、推進派として反論を行うとともに、
畿央地域のための具体的な提案を行ったものである。

  この報告では、移転反対論に対し、世界史的な流れが「小さくて中立的な首都」にあり、
政治行政と経済の中心を切り離すことで地方分権、国際化、規制緩和にふさわしい環境が
つくれるとしつつも、内容について、バージョンアップが必要とした。
とくに、京阪神や名古屋の機能を活用するとともに、一部の機能はほかの候補地に
分散することで、人口六〇万人規模という予定を縮小し、三〇〜四〇万人とすべきとしている。
国会や主要官庁、大使館などが置かれる国会都市は三重県阿山町付近に置くことや、
「日本文明館」、「世界文明交流館」といった文化機能も提案された。

  交通網の整備に当たっては、東京と短時間で結ばれるだけでなく、新しい全総でも示された
日本海国土軸、新太平洋国土軸、北東国土軸の形成を助けるものでなくてはならないことと、
本格的なハブ空港から便利であることが重要とした。

  具体的には、長期的には中央リニア新幹線を主たる交通手段とすることが明確に
すべきとしつつ、リニア開通に伴う二重投資を避けつつ暫定的な交通機関を確保するため、
北陸・米原・畿央・関空新幹線を提案している。
これは、東海道新幹線の米原駅付近から分岐された高速鉄道(新幹線・在来線併用軌道)で、
東京とは2時間以内の直行列車で結ばれる。この新線は北陸新幹線と連絡するとともに、
飛鳥地方や和歌山県を経由して関西国際空港と30分で結ぶ。
また、将来は新太平洋国土軸にそって四国・九州へ延伸することも期待され、
加えて、名古屋を経由せずに東西日本を結ぶ危機管理にすぐれた国土構造の実現をめざす。

  空港については、近隣にびわこ空港などの計画もあるが、国際線については、
多くの国際便が運行される可能性はなく、むしろ、旅客需要が低迷する関空の
てこ入れ策としても、ボンがフランクフルト空港と専用列車で直結されていたような形が
現実的だろう。

  一方、関係の四府県(三重・滋賀・京都・奈良)でも、具体的な交通や機能配置案を
まとめたが、ここでは、リニア新幹線の名古屋・大阪間を先行開業させるとともに、
誘致中の東海道新幹線栗東新駅から新幹線を畿央まで引くとしている。
しかし、リニア新幹線の部分開通は、採算的にも技術的にも無理だとみられるし、
栗東新駅からの分岐は地形などから見て、東京方面からは大きく西に、
京都・関空方面からは大 きく東に迂回が必要で、所要時間もかなり伸びるとみられる。

  また、四府県案では、大使館など国際交流施設を、国会都市から離れた別の新都市に
配置しているとしているが、大使館などが政府機関と離れた地区に置くことを強いることは
非常識であるし、当初は国会都市のみが整備されることになっていることからすれば、
しばらくは、大使館などは東京に残留することになってしまうなど、今後の検討が必要だろう。
四府県においても、今後、よい提案としていくために努力していくとしるが、
議論が山場にさしかかっており、早急な対応が必要であろう。
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