92.歴史教科書問題について

  歴史教科書問題についての私のポジションをお知らせしたい。
私は、「つくる会」の新しい教科書は好きでないし、歴史観を異にしている。
しかし、今回の検定合格は正当なものであるし、
外国からの圧力ははねのけるべきである。
勝負は、各学校や教育委員会の採択の場で行われるべきものである。

  まったく皮肉なものであるが、文部科学省が行った厳しい修正意見の結果、
この教科書は随分と穏健なものになった。
むしろ、戦後史観的な立場から書かれた教科書のうちの
いくつかより「まっとう」とすらいえる。
修正をしなければ誰がみても変な教科書だったのに、
しっかりと修正してまともになったことが良かったのか悪かったのか?

  たとえば、南京事件については、あたかもなかったがごとく書くのも、
30万人という根拠のない数字を疑問を呈することなく持ち出すのもどちらもおかしい。
ところが、「つくる会」のほうは、修正の結果、
「数字について定説がない」といった表現になり、
30万人という数字をそのまま載せているほうは修正されずということになると、
「つくる会」教科書のほうがまともになってしまう。
多くの教科書が、「つくる会」教科書に刺激されて、
客観的な表現に修正したのは、「つくる会」の運動の怪我の功名である。

  慰安婦問題にしても、私は、記述することににわかに賛成できない。
なぜなら、歴史的に戦争というものに女性に対する性的虐待がつきもので
人類が悩まされてきたこと、売春が世界最古の職業といわれて
現在でも先進国のいくつかも含む多くの国で合法であり
現代日本でもしばしばお目こぼしがされていること、
「慰安婦」的なものが軍隊による現地人への性犯罪を防ぐ目的で
構想されることは珍しいことでなく
戦後の日本でも米軍の要請に従って日本政府はそのような施設を準備したこと、
自分の意志で慰安婦になった人もいたといった全体像をきちんと教えた上で、
いわゆる慰安婦問題について触れることなら賛成であるが、
いまの教科書における慰安婦問題はあまりにも唐突に、
また、子どもたちに日本軍が古今東西に類例を見ないような
非道行為を行ったような誤解を与えるような記述がされている。
そういう意味では、慰安婦問題が多くの教科書から消えたことも不当とはいえないだろう。

  いわゆる教科書問題は中曽根内閣が中国などの圧力に屈してから
不愉快なことが続いていた。
いま、ブッシュ政権のもとで対中強硬路線がとられている時期であり、
歪みをなおしておくよいチャンスである。
こうした問題について、中国や韓国から一方的な干渉を許すべきでない。
もしやるなら相互的なものであるべきだ。
この問題は短期的には中国や韓国とぎくしゃくするだろうが、
長期的に雨降って地固まることにしたい。

  私は、どちらかといえば、戦後史観に好意的なほうだが、
やはり少し無理を修正しないと、「つくる会」史観のようなものに防御力を保てないと思う。

91.小沢征爾の「コジ・ファン・トゥッテ」

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