298.「北方領土問題についての勉強不足」

 鈴木宗男問題に関して北方領土について議論されることが多いが、ムネオ問題のおまけのように扱われ、問題の本質が語られないのは困ったことだ。そんなことも思い、先週、テレビで解説をしたので、それをここでも書いておく。
 この問題については、四島一括返還論が正論だというように思っている人が多いが、そんな単純ではない。
 そもそも、問題をこじらしたのは、戦争末期から戦後にかけて、四島のことなど誰も深く考えなかったことである。だいたい悪いのはスターリンに日ソ平和条約を破って参戦させ、そのえさに、千島と南樺太を差し出した米英である。それも、日露戦争の結果、日本に帰属した南樺太はともかく、千島をソ連に渡す理屈などそもそもなかった。
 しかし、米英の求めで千島にやってきたソ連は、ついでに四島も占領してしまった。これは、北海道占領の布石だったのだが、ここで、米軍も四島占領を黙認してしまったし、日本政府もそれどころでなかったので、同じようなものだった。
 その後も、外務省が四島は千島でないと的確な行動をしたわけではないし、サンフランシスコでも理屈もなく千島を放棄した。
 日ソ共同宣言の際には、平和条約締結時に歯舞・色丹を返すと書いたが、ソ連は日米安保改訂を理由にこの約束も反故にしている。
 田中・ブレジネフ会談では両国の未解決の問題の討議を約束し、そのなかに四島問題が入るとブレジネフも約束したと当時の田中政権は喧伝したが、ソ連側はそういうことでないといってきた。
 その後、ゴルバチョフ以降、ロシア側も話し合いには柔軟になっているが、解決が難しい問題であることに違いはない。
 かつて、私は、この問題について、フランスのモレル駐露大使と話したことがあるが、彼は、日本政府がこの問題において何を具体的に実現しようとしているか、フランスもほかの国もさっぱり分からないといっていた。ああだこうだといろいろいっているのだが、外交は、なんでもかんでも主張を並べればいいのでなく、主張を絞り、その実現のために集中して努力をするのでなくてはならない。
 そういう意味では、二島先行返還論というのは、ある種、きっちりした考え方ではある。まず、ロシアも拒みにくい二島を返還させ、ロシア人島民に日本帰属が悪くないことを示せば、国後・択捉でも日本歓迎ムードが出てきて、ことがうまくいくかも知れないという筋書きである。
 これは、とくに北海道の地元にとっては、悪くない話である。
 ただし、こういう方針について、余りにも国民に説明がされていないし、政治家も勉強不足である。
 私自身は、四島を実際に返してもらうことにはあまり興味がない。むしろ、日ソ平和条約侵犯やその後の北方領土侵攻、シベリア抑留などの非を常に鳴らし続けることの方が大事だと思う。その意味で、南樺太や千島を諦める必要はないし、あまり経済的な価値もない四島返還のために必要以上の対価を払うべきでないと思う。
 せいぜい、もし、返還されれば、ロシア人たちに永住権を上げるとかいうアドバルーンを上げて、あちらを混乱させるだけしておけばいいのでないかと思うのだが、北海道の住民の立場からの二島先行返還論も理解できないわけでなない。
  いちばん、馬鹿げているのは、なんの展望も考えもなく、四島一括返還論を国際的にも馬鹿にされつつ、意味なく自己満足で叫ぶことである。

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