479.韓国大統領選挙と首都機能移転
韓国では、大統領選挙で与党の盧武鉉(ノムヒョン)候補はソウルと釜山の中間にある忠清道地域に首都機能を任期中に移転するということを中心的な公約として提唱し勝利した。
 韓国では一極集中のソウルや周辺都市は人口が増える一方で、このままでは首都圏人口は10年ごろに2500万人に達すると推定されている。そこで、深刻な住宅難や教育問題を解消するためにもソウルを「経済首都」にし、忠清道に「行政首都」を置くというのが、盧武鉉候補の主張だった。
  具体的には「忠清(チュンチョン)圏の新行政首都については、就任後、1年以内に敷地を選定して任期内に着工する。行政首都には大統領府と中央部処(日本の省庁にあたる)はもちろん、国会も移転する」、「1年以内に計画樹立と立地選定を完了して2〜3年以内に土地の買い入れと補償を実施し、任期内に用地の整備と、インフラを整え、政府庁舎の着工などを完了する」というもの。
 韓国ではソウルが朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)との境界線からあまりにも近く、第二次朝鮮戦争勃発のときには、最終的には敗戦ということにならないにしても、いったんソウルが陥落することは必至とか、少なくとも、「火の海」になるような被害は不可避とすらいわれている。そこで、部分的な行政機能の移転はすでに進められてきた。
 忠清道地域の中心都市大田は、ソウルからには既に関税庁・統計庁・中小企業庁・特許庁など各省庁の中枢部以外で国会などとの連絡がそれほど密でない11機関が移転している。ソウルから一五〇キロほど離れているから、およそ、東京からいえば浜名湖周辺といったところだ。果川というソウルの中心から南へ一五キロ離れたところには、20年くらい前から首都機能の一部が移転し、財政経済部・法務部・科学技術部・建設部などが既に移転している。
 今度は、大統領官邸から国会まで含めて本格的な首都機能の移転を一気にしようというのである。ただし、名目的な「首都」はソウルに残すようでもある。
  これに対して、ハンナラ党の李会昌(イフェチャン)候補は「ソウルが空洞化し不動産価格の暴落を招く」と批判した。これを受けて、共同通信は16日に「韓国ではバブル崩壊前の日本と同様、不動産価格は右肩上がり。中流層でも投資用の不動産を所有するケースが目立つ。『値上がりを期待し、借金して買う人も珍しくない』(不動産業者)実情を背景に、有権者の反応はかんばしくない」、「ソウル市民らの間で『不動産価格が落ち、損失を被るのでは』と警戒感を生み、盧候補に思わぬ逆風となる可能性が出てきた」などとしていた。
 しかし、結果から見ると、ソウルでも盧武鉉候補が李会昌候補に大きな差をつけて勝利し、李会昌候補の地元である忠清道でも同様の結果が出て、首都機能移転論はソウルでも移転先でも支持されたのである。共同通信電も東京での議論に影響され過ぎたのではないか。
 ただ、分裂国家ならではの難点もある。南北統一がされたときに忠清道が最適な首都であるかという点である。現在の韓国の領域を前提にすれば、慶尚道、京畿道、全羅道という三大地方の中間であり、二〇〇四年に仮開業する新幹線の沿線にある忠清道は日本でいえば三重や岐阜のような東海地方に比肩し、地方主権国家をめざすうえでも最良の地点である。ところが、南北統一ということになれば、高麗の王都だった開城あたりが適当だという声も強い。もちろん、その場合でも、開城は北に偏りすぎるとともに歴史的な経緯からも北朝鮮色が強すぎ、一方、ソウルが首都では韓国への吸収という印象が強すぎるということからは、忠清道こそ最適で、ソウルと平壌に何らかの特別の地位を与えるという解決こそ統一後の韓国・朝鮮にふさわしいという考え方もあろう。

478.盧武鉉候補の勝利を歓迎

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