14.COP6を決裂させた仏環境相の愚かさ

  ハーグでのCOP6の決裂に関しては、誰の責任かという議論が盛んである。
そんななかで、英国のプレスコット副首相がフランスのボワネ環境相を
「疲労して全体の仕組みに対する判断ができない状態になって交渉を決裂させた」と
非難して話題になっている。

  私も内外の事情通の人たちから聞くとたしかにそういうことらしい。

  日本国内では、日本が森林吸収分などにこだわったのが
交渉決裂の理由の一つなどといわれもしているが、あまり正確ではない。
たしかに、森林吸収分の議論には少し無理がある。
日本では、「森林=環境によい」とされることが多いが、
国際的には日本におけるほど森林への評価は高くない。
そういう意味で、やや過大評価を要求しすぎであるのは事実だし、
京都会議のときのこの問題についての結論に賛否があるのは当然である。

  しかし、今回は、京都会議の結論への是非を議論する場所ではなかった。
京都で決まったラインに沿って、具体的なスキームをつくるというのが目的の会議であった。
だから、もし、「京都の結論が気にくわないから失地回復を」などという国があれば、
会議はうまくいくはずがない。今回の目的はより素晴らしい成果を上げることでなく、
決裂を避け合意を作り上げることだったはずである。

  そういう観点からいえば、最初の日米に厳しいブロンクス提案は、
交渉成立への真摯な態度に欠けていたといえる。
しかし、この失敗をプレスコットが挽回すべく、有能に動いて、なんとか、
成立寸前まで持っていった。その背景としては、米国の現政権が下野することが
確定的になってきたので、ある意味ではブッシュ新政権への
嫌がらせのようなところもあって、森林吸収分について米国が妥協をしたことや、
原子力の問題について日本や米国が主張をマイルドにしたこともあった。

  そして、ドイツのトリッテン環境相もほぼ納得した。
ところが、疲労困憊したボワネが日米とEUの双方が譲るべきところを譲って
本来はEUにとっても悪くない案になったことを理解してくれなかった。
私は留学も勤務もフランスでかなりフランス贔屓だが今回だけは残念だった。
今回の新聞報道でデンマーク代表がプレスコット案に「これでは京都会議を無にする」
といってペーパーを投げ捨てたといったことをおもしろおかしく報道した新聞もあったが、
EUは、デンマークなどが何をいっても相手にしないが、フランスとドイツだけは
どちらかが反対すると動かなくなる。

  ブロンドのショートカットがトレードマークのボワネ女史は、高速道路や原発の反対運動に
先頭に立つと、なかなか画になるということも含めて、ジャンヌダルク的説得力に富む。
しかし、問題の所在を冷静に把握し、国際交渉をまとめるなどという局面では
これほど向かない人もない。
今回も、全体として誰が何を取って何を譲ったかという全体像をまったく理解しなかった。
そのうえ、原子力については、「私は原発反対運動20年、これに人生をかけてきた。
原発に少しといえども前向きの評価をするなど耐えられない」などといったらしい。
ボワネ女史が個人として反原発に固執するのは自由である。
しかし、国際交渉をまとめるときに彼女の個人的な人生の満足など
考慮の対象にすべきであるはずがない。
そんなことを言い出したら、国際交渉などまとまるはずがないのだ。

  結果、ほとんどボワネ女史一人でCOP6は壊れた。彼女は個人としては満足かもしれない。
しかし、もし、ブッシュ政権ということになったら米国はこれまで以上に頑なに後ろ向きになる。
その意味でも、今回、なんとしてでも米国も納得して交渉をまとめることが
必要だったのでないか。そうした意味で、ボワネ女史は地球環境問題への
世界的な取り組みを大きく後退させた。

  彼女の地球環境問題への前向きな熱意や成果をだれも疑わないが、
国際交渉は本人の心意気でなくそれをまとめる複雑なプロセスを理解し
それぞれの立場で必要な役割を演ずる実務能力があるかが問われることを
高い授業料とともに再認識させるものとなった。

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